PRの理論(&ちょこっと実務)おさらい!書評「デジタルで変わる広報コミュニケーション基礎」

大学教授やPR識者がずらりと名を連ね、論文集のような一冊、「宣伝会議」マーケティング選書、意外と硬派//

広報コミュニケーション基礎 (宣伝会議マーケティング選書)

「広報って何?」な方から、「あれもこれも広報の仕事みたいだけど、どうすりゃいいの?」な方まで、業務の棚卸、思考の整理に役立つ頼れる良書です!

コーポレート・コミュニケーションからCSRにIR、グローバル広報、危機管理、メディアリレーションズまで、かなりの範囲。「広報で気になるトピックは全部網羅してやろう」という意気込みが満ち満ちてます(笑)執筆陣は1章約20ページで、概念と実務を簡潔に記され、感心しました(何様目線で恐縮です)。

レピュテーションとイメージの違いってわかる?

さて個人的に、本著一番の「へぇ〜」は、”第3章 東洋大学経営学部教授(執筆時)の井上邦夫先生”の項。レピュテーションとは、文字通り”評判”ですが、企業広報におけるイメージとレピュテーションの定義が、わかりやすく整理できました。


イメージは、企業に関する個人的な経験や情報、うわさなどによって、瞬間的に形成される「印象」(impressons)を反映したものと言われます(Cornelissen 2004)

レピュテーションは、イメージよりも時間をかけて形成される「認知」(perceptions)を反映したもの。すべてのステークホルダーの間に形成される「認知の集積」(cumulative perceoions)です(フォンブラン&ファン・リール 2004)

認知とは”単なる印象ではなく、思考を重ねたうえで形成される知覚”。だからこそ、認知の塊であるレピュテーションは、一旦根付いたら変わりにくく、効果が高いのです。レピュテーションのメリットは色々。

①優秀な人材を獲得しやすくなる、②消費者が商品やサービスを進んで購入するようになる、③資金調達が容易になる

メデイア報道についても、レピュテーションの高い企業の扱いは、大きくかつ好意的になる

レピュテーションの高い企業であれば、人々は「そんなはずはない」と風評を懐疑的に受け止めてくれる可能性があり、レピュテーションの低い企業の場合には、人々は「やはりそうか」と風評を信じてしまい、被害に見舞われるリスクが高まります。

まさに、”広報の効果”として目指したい姿です。イメージは短期的・レピュテーションは長期的・・・長期的な視点で広報戦略を考えたいですね。広報担当だけでなく、社内がレピュテーションの重要性を理解できるよう、”広報効果”を社内広報するのも大切です。

さらに、レピュテーションとブランドの違いって。。。?

レピュテーションを高めたいなら、長期的に一貫したメッセージを発信するべき。そのためには、自社のアイデンティティーを固めなければなりません。本著によると、アイデンティティーの基本要素は「理念・ビジョン」「企業文化」「シンボリズム」の3点。この辺りは、企業広報の分野ですが、マーケティング PRの実務では、アイデンティティーよりブランドを意識することが多いはず。本著で紹介されていた研究では、複雑怪奇なこの辺りも、なんとか整理してくれています。

ブランドは経済的な付加価値を含んでおり、主に一次ステークスホルダーに訴求する概念 ←→ レピュテーションは、経済的価値だけでなく、それよりさらに広範な認知を含む

注)一次ステークスホルダー:経済的あるいは契約上の利害関係あり(顧客・従業員・株主・取引先など)、二次ステークスホルダー:経済的あるいは契約上の利害関係がなく、企業の存続に直接的な影響を及ぼさないその他全ての利害関係者(政府、報道機関、NPOやNGOなど)

つまり

①「売れる仕組みを作る」マーケティングにおけるPRでは、経済的価値の高いブランドの確率が重要

②企業広報は、さらに広い価値を含むレピュテーションの確立を目指すべき

広報実務において、目の前の施策の目的を明確にすることは簡単なようで難しいのですが、上記2つの違いを広報担当者だけでなく、関係者全員と共有して進めること=戦略の合意が重要です。

「戦略的な広報とは?」の4章

さて、「戦略の合意」のためには、戦略を立案しなくては(笑)。第4章は、社会情報大学院大学教授 小早川譲「広報戦略の立案」です。

本章では、広報戦略の切り口を4つあげています。

  1. コーポレートとしてのレピュテーションの確立、理解/認知の向上など、全社的な広報課題からスタートし、それらに対応する広報戦略
  2. ステークホルダー別に見ての「より良い関係性、そしてレピュテーションへ」の課題からスタートし、それらを確立することに対応する広報戦略
  3. 個々の事業部門ごとに見ての課題からスタートし、それらに対応する広報戦略
  4. 組織としての広報力・危機管理能力拡充に向けての広報基盤戦略

1〜3は、広報の現場で、課題から整理するのに有効な切り口です。1は全社的、2は顧客だけでなく投資家、従業員など対象別、3は、商品ごとサービスごとなどマーケティングより。それぞれの戦略で、経営陣なのか実務担当なのか、実行者が異なる可能性もあります。「これって、社長の仕事では???」みたいな、、、。

理論だけでなく、実践編も面白い

その他、博報堂、電通PR、ブルーカレントなどの書き手が名を連ね、様々なトピックをコンパクトにまとめています。特に、15章のメディアリレーションの項が、他の項と比べ、圧倒的に具体的で面白かったです!15章執筆のビーコミ株式会社加藤恭子氏、本著で知りましたが、ブログもとっても参考になりました!!

加藤氏のオルタナティブブログへ 

<参考資料>

全ステークホルダーを見据えた 企業ブランディングの実践へ (井上邦夫 / 2017年6月号広報会議)

メディア環境の変化とコミュニケーションデザイン(安藤元博氏/2016年10月号広報会議)

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