ジブリは古典となるか「ナウシカ考」

マンガ「風の谷のナウシカ」を論じた大作。民俗学者である著者が、ひたすらにテキストとしてナウシカを読み込み、解釈した試み。かなり好き。

ナウシカ考 風の谷の黙示録

ナウシカに挑む、知的冒険の書

本書は25年間の考察を経て2019年11月に出版、マンガ「ナウシカ」の思想に真っ向から挑み、地理、世界史、民俗学、神話や文学など現実の文脈のなかにナウシカを位置付け、さまざまな角度から読み込んだ野心的な本です。

蔵書しない派の私ですが、マンガ「ナウシカ」は例外、嫁入り道具のように実家から連れてきた数十年の仲。思い入れありすぎ&内容がすごすぎで、ただ圧倒されて読了するだけ、解釈なんてめっそうもない存在です。

宮崎駿の思想の到達点など、その解釈の面白さは本著を読んでいただくとして、私は、この本を読みながら、「ジブリ」と同時代であった幸運をつくづく感じました。

ジブリと同時代に生きる幸せ

2013年「風立ちぬ」、ファンタジー作品なら2008年ポニョが宮崎駿監督の最新作封切りの最後。あのワクワクを最後に味わってから、もう10年以上経ちました。それでも、いまだに心のどこかで最新作を待たずにはいられない。それほどの祝祭感であり、私にとってのライフイベントでした。

そんな気持ちを同じくする人は多くいるようで、「あのワクワクを再び!」という試みが最近目立ちます。長大で複雑なマンガ「ナウシカ」を歌舞伎で描き切った傑作「ナウシカ歌舞伎」も、そのひとつでしょう。

この本を買ったのは「ナウシカ歌舞伎」観劇の興奮さめやらぬ2020年春、コロナ禍でナウシカが再び注目されるなかでした。マンガ「ナウシカ」の深淵な虚無に、コロナ不安の真っ只中で向き合う気力がわかず、積読のまま放置し、コロナを日常として受け入れた2021年の初め、ようやく読むことができました。この読書体験も、人生とジブリが交わった忘れられない思い出になったはずです。

「ジブリは古典」になるか

宮崎監督の新作がもう二度と見れない(かも)という欠落感を抱く身としては、「ナウシカは古典として考察され読み継がれるべき」という後書きはガツンと衝撃的でした。

そうか、ベートーベンもモーツァルトもウォルト・ディズニーも、新作はなくともそこから生まれるいろんな作品はある、それと同じ存在になりえるってことか!と一片の光を感じたのです。

ドストエフスキーと宮崎駿作品の共通点(解釈され続けるだろう)というのも、ジブリの愛で方として、かなりしっくりきました。

ナウシカとアニメージュと私

ナウシカとガンダムが原体験、「アニメージュ」「ニュータイプ」「アニメディア」は毎月チェックする系女子でしたが、連載中のナウシカは難解すぎて、、、(そもそも、あれを連載で読んで理解できた人はいるのか?)。30数年前のあの記憶から、「ナウシカ考」を目の前にした今この時まで、ずっと追いかけてきてよかったなぁと、謎の感慨に耽っています。

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