宇宙と読書の大いなる共通点に感動「忙しすぎる人のための宇宙講座」

宇宙に想いを馳せる、心が解放される至福のひととき。それに加えて「読書への情熱」も奮い立たせる素晴らしい1冊。著者だけでなく、わかりやすい日本語に仕上げてくれた監修の渡部潤一先生、訳者の田沢恭子さんにも大感謝、今年の私的ベストに入りそう!

忙しすぎる人のための宇宙講座

ビッグバンからダークエネルギーまで心解き放つ読書体験

分厚い本を読む時間はないが、それでも宇宙のことを知りたい。そんなすべての人へ

という序文で始まる本著は、宇宙の基礎知識をこれ以上ないほどわかりやすく、魅力的な文章で解説してくれます。

例えばビッグバンがテーマの第1章は、このように始まります。

「できちゃった婚」のように始まった宇宙?

誕生の瞬間。今から140億年ほど前、われわれの知る宇宙空間と物質とエネルギーはすべて、本のページに印刷されたピリオド一つの一兆分の一にも満たないサイズに収まっていた。

温度はとても高く、各々の持ち分で宇宙をつかさどる自然界の四つの力はまだ、一つにまとまっていた。

その瞬間にどんなことが起きていたのか、どのように「針の先ほどの宇宙」が膨張をはじめたのかを日常的な言葉で描写し、私たちにイキイキと想像させてくれる興奮の冒頭3ページを経て、ページをめくると、

宇宙誕生の瞬間から、一兆分の一秒が過ぎた。

との一文。このストーリーテリングの見事さに4ページ目にして脱帽しました。

ツイッターフォロワー1200万越え、一般人へのわかりやすい解説で大人気の著者

著者のニール・ドグラース・タイソン氏は

  • アメリカ自然史博物館の天体物理学者
  • ニューヨークのヘイデン・プラネタリウム館長
  • 『スター・トーク』『コスモス:時空と宇宙』などラジオ/テレビ番組のホスト
  • 1200万超のツイッターフォロワー

という、研究者と一般人をつなぐ仕事で非常に著名な方です。

例えば、一般性相対論や量子重力理論などの難解な物理法則から、わかっていないことは何か(なぜビッグバンが始まったのか?/誕生直後から10のマイナス43乗秒の「プランク時代」の謎など)まで、見事に解説してくれます。専門知識のない一般人に向かって、宇宙を説き続けたそのキャリアの集大成とも言える出来栄えです。

実際、自身のエッセイから選りすぐりを編集した本だということで、目次を見るだけでも

銀河のあいだで

銀河単位という大スケールで見る宇宙はなんと意外な。何もない空間にあるものの話

ダークマター

なぜ見えないものを「ある」と考えなければならないのか?

など、心踊るテーマが並んでいます。

これは私だけが読んではダメ!と、高校生の息子に「この本読め読め!」と珍しく押し付けました、、

「なぜ読むか?」の答え、ここにあり!

活字中毒としては「読むか読まないか」ではなく「何を読むか」が、人生における重大な関心事です。ビジネス書も大好きですが、純粋な好奇心を満たすサイエンス・ノンフィクションも定期的に読まずにはいられない。それは、内から溢れる衝動のようなものです。

数年前に、天地がひっくり返るような衝撃を受けた

捕食者なき世界 (文春文庫)

という書籍(絶滅大型肉食獣と生態系がテーマ)の感想を、興奮気味にSNSにアップしたところ、「そんな本読んでるから忙しいんだよ!」とコメントをもらったことがありました。そのコメントに返事ができないまま、その後ずっと、

なぜ私は絶滅動物や宇宙や細胞の本を読むのか?

を、なんとなく考え続けていた気がします。

著者は立場上数限りなく、

なぜ「宇宙か?」

と問われ続けてきた方でしょう。それについての返答が、本書の最終章です。

「宇宙的視野を持つことについて」

と題された本章は

あらゆる学問の中で最も高尚で、最も興味深く、最も有用だと認められていて、実際にも間違いなくそうなのが天文学である。この学問で得られた知識により、地球について多くのことが明らかになるのみならず……その知識によって伝えられる数々の深遠な概念によって我々の能力そのものが拡大し、我々の精神が卑小な偏見を超えた高みへと引き上げられるのだ。
ジェイムス・ファーガソン(1757年)

という18世紀の言葉から始まります。

そして、人間のエゴにつける薬としての「宇宙スケール思考」について、格調高く、情熱あふれる文章で綴られています。

宇宙に関するわれわれの知識が拡大をやめる日が訪れたら、われわれは宇宙が比喩的にも文字通りにも我々を中心として回っているとする幼稚な見方に後退しかねない。

その荒涼たる世界では、武器を持ち、資源に飢えた人間や国が自らの「卑小な偏見」にしたがって行動することが多いだろう、そしてそれが人間の啓蒙という営みの、最後のあがきとなる。-ーー宇宙的視野を恐れるのではなく再び抱くことのできる、想像力に富んだ、新たな文化が誕生するまでは

宇宙という表現しきれない対象物を、我々にイメージさせてくれた本著、エキサイティングな読書の旅の最後がこの文章で締めくくられていること、その意義を深く噛み締めております。

難しいことをわかりやすく伝える技術と情熱、見習いたい!

<ニール・ドグラース・タイソン氏 その他書籍>

ブラックホールで死んでみる タイソン博士の説き語り宇宙論(上) (ハヤカワ文庫NF)

かくして冥王星は降格された太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて

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