書評「一緒にいてもスマホ」その②

スマホに囚われてる異常な日常について、その②です。

一緒にいてもスマホ ―SNSとFTF―

スマホが変えてしまったものはなにか

スマホを手にし、会話を失ったことで、私たちは、孤独=内省、友情=共感、社交=指導という”三つの善”を失ったと著者が述べているのは、その①にも書きました。”寝る直前までブルーライトを見ていると、睡眠の質が悪くなるよ”とか、”歩きスマホは視野が狭くなりますよ”といったレベルの変化ではなく、もっと人間として本質的な事が変わってしまっているのです。

例えば孤独な時間、一人きりで考える時間を知らないと、思考は深まらない。退屈することは敵ではなく、自分の内面を見つめる自由な時間のはずなのに、オンラインにその”孤独の恩恵”を全て奪われている、というのだ。そして、学校の現場で教師が持つ懸念が象徴しているように、オンラインのコミュケーションでは、共感を学ぶことができないのです。

また、オンラインにより、恋愛も変質しています。恋人探しアプリにより、出会いの選択肢はあふれ、メールでのコミュニケーションにより、会話での失敗はなくなり、と便利で手軽で傷つきにくい構造になっています。編集された”自己”を商品として、よりよい相手をマッチングする、終わりのないゲームのような感覚になっているそうです。

ほかにも、デジタルデバイスの導入により集中力が欠如してしまった教室での生徒たちの様子や、オンラインの会話で監視される私たちのプライバシーの問題、スマホチェックしながらの会議で議論が深まらなくなった職場など、あらゆる場面が変質していることが、数え切れないほどのインタビューや事例紹介により、本著のなかで次々と明かされていきます。

失ったものは取り戻せるか

今危険にさらされているのは、自己コントロールできる自己という感覚だ。そして、自分で考えることができる市民だ。

オンライン上での行動が全て監視されていることを意識すると、監視されてもよい行動だけをするようになります。オンラインに記録するべきことを意識すると、例えば、私の読書傾向でさえもブログで扱える本に集約されていきます。コントロールされている、という感覚もないままに、影響されてしまうのです。

スマートフォンは(略)行動ばかりか、人格まで変えるほど心理的影響力のあるデバイス

なのです。

ですが、私たちの変質は不可逆ではありません。たった5日間のデバイスフリーキャンプで、子ども達は共感する能力を取り戻し始めるという研究結果もあります。それには、”ツールに頼らない”会話を意識的に取り戻す必要があります。その手段として、

  • スマートフォンの力を忘れない
  • 時間をかける(静かな時間をつくる・会話のためのスペースをつくる)
  • シングルタスクを実行してみる
  • 難しい会話を避けない

といった様々なアプローチを紹介し、本著は締めくくられています。

著者は本書を執筆した2015年以降、セミナーや寄稿などで本著のメッセージを発信し続けています。最新のメディアインタビューなどを見ると、アレクサや、グーグルホームなどの”しゃべる”AI機器との付き合い方について、ワシントンポストやNYタイムスなどで記事化されています。人格があるかに錯覚するAIデバイスたちは、スマホとは異なる影響力をもっているのかもしれませんが、人間として対面会話(スマホを見ないで!)をとにかく増やすことを、自分、そして、特に子ども達に意識して伝えていきたいと思います。

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