書評「もしもし下北沢」よしもとばななの描く中年も、味わいあるなぁ

思い出のつまった”下北沢”と、10数年ぶりの”よしもとばなな”という読む前から、期待の高まる組合せ。もちろん、読んで正解の大満足でした。

もしもし下北沢 (幻冬舎文庫)

父親が無理心中に巻き込まれたあと、逃げるように下北沢に引っ越してきた娘と、娘の一人暮らしの部屋に転がり込んできた母を軸に、下北沢の街を舞台に展開するストーリー。

2010年初版と、少し前の本でしたが、それでも20代の瑞々しい感情を描き続けられる著者は本当にすばらしいな、というのが正直な感想。初期のよしもとばなな作品、まさにピッチピチの、水が滴るような20代の感性で執筆していたであろう作品たちでは、ほとんど存在すらしなかった、どこにでもいそうな中年たち、”母親”や”お父さんの友達”がリアルに生きているのが、とてもよかった。

題材によっては、自分と遠い話に思えてしまう、著者の作品が、中年の恋心を持て余す大人たちと、下北沢の街、という共感しまくりの要素によって、とても身近なおとぎ話として読めました。

下北沢の街の、あのゴチャッとした感じ、店の人の個性がそのまま店構えに表れている感じ、ホントにうまいこと描きますよね。すごい。

私のバイトしてた小さなレストランも、良いお店だったなぁ。

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