賢いってなんだろう?「知ってるつもり 無知の科学」


「学ぶ」ということの根本を考え直したくなる、なかなかNO衝撃本。

知ってるつもり――無知の科学

章を追うごとに深く深く、初めの数章で諦めちゃダメ!

冒頭の数章は、認知学や脳科学のおさらいのような内容もあり、正直「どっかで聞いたことあるぞ」感あるのですが、6章くらいからの怒涛の新事実がすごい。

「第6章 他者を使って考える」にある

人間の子供は共同作業をしたいがために、一緒に作業しようとした。一方、チンパンジーには共同作業という概念が理解できなかった。

どちらのケースでも人間を特徴づけるのは、他者とともに何かをし、それに対する関心を共有する能力であり、またその欲求である。人間は協力するようにできているのだ。

という観察。確かに、結果でなく過程が楽しいから遊ぶって、赤ちゃんでもよく見かける行動ですよね。子どもたちが小さい頃、ブロック積んで目を合わせてニッコリ、また壊して同じこと…「これを20回はやるのだ、わかってるぞ」と心の中でつぶやきながら、よく付き合ったものです。

さらに、人間は「自分の頭に入っている知識と、その外側にある知識を区別できない」とか「文化が我々に及ぼす影響力は、啓蒙の努力によって覆せるのではない」とか、肌感覚でわかってたけど、言語化されると、いかに今まで無意識に過ごしてきたかを突きつけられるような研究結果が続々ザクザク。

イエール大学の教授ダン・カバンによると

科学に対する意識は、エビデンスに対する合理的かつ公平な評価に基づくものではない。特定の信念を捨てると言うことは、他の様々な信念も一緒に捨てること、コミュニティと決別すること、信頼するものや愛するものに背くこと、要するに自らのアイデンティティを揺るがすことに等しい。

だそうです。「文化は啓蒙に勝てない」っていうのはこれのことですね。並行して読んでいた「サルは大西洋を渡った」という本が、「学者たちがいかに既存の研究を覆すのが大変か」という内容だったので、客観的であるべき科学の世界でもそうなら、なおさら簡単に覆るものではないな、ということを感じています。


ショッキングな事実「政治について考える」

因果的説明は人々の意見を穏やかにするのに役立つ簡単かつ効果的な広報である、と言うわれわれの主張は、特定の問題にしか当てはまらない〜具体的には、価値観に基づいて意見が決まる問題ではなく、結果に基づいて意見が決まる問題にしか当てはまらない。

通常の場合、「どんな結果を導くか」を説明すると、過激な意見が減り、人々を穏やかな意見に導ける。しかし、「どんな理念にに基づくか」という価値観の問題にした方が通りやすい主張がある、政治家は、結果でなく価値観を強調するよう、論点をずらすことが多い、といいます。確かに、商品説明よりも、その会社のミッションや理念を伝えた方が共感を得られる、というのはもはや当たり前の事実ですが、それが「政治」といった社会課題を扱う分野でも同じ、というのは、ちょっと騙されたような気分になりますね。

特定の政治的立場を推進する人々が、たいていの人が結果に基づいて判断する問題を、価値観の問題であるかのように見せようとすることがよくある。最たる例が医療制度だ。



「賢さ」とは?


もはや、備忘録のようになっていますが、「賢さ」の定義の章も面白かったです。

有能な集団にはg因子が高い人が大勢いる必要はない。必要なのは、異なる能力を持った人はバランスよくいることだ

クラスに幅広い専門知識が決まるほど、学習効果が高まる。集団に経歴、階級、性別、人種の異なる人が集まる方が、知識の幅が広がる


g因子とは、知能を図るテストに共通する基本的特性を因子分析と呼ばれる手法で特定したもので、いろいろな分野にわたって影響を及ぼす、「総合的な知能の高さ」みたいなものだそうです。つまり、知能が高い人ばかり集めるより、多様性の方がよほど集団としての能力は高い、ということですね。

そして、学習の仕方も、「集団」がキーワードになります。ピア教育、ピア指導、協力的学習、ピア・コラボレーションといったやり方です。仲間と関心を共有し協業する、しかも、メンバーが同じ場所で同じリソースを使って学習する、といったことが効果の高い学習方法であることが、わかってきています。


よく売れそうな商品を買うのが「人間」。究極のインサイト!

私たちは地域のコミュニティが助けてくれるので、詳細を理解する必要は無い、と言う考えに基づいて生きている。詳細な情報が必要になることがあれば、頼れるアドバイザーがいる。他の参加者がきちんと調べるから、市場では1番よい金融商品が一番支持を集めるであろう。


説明がキチンと書かれた商品でなく、よく売れそうな、わかりやすい商品を選択する人のインサイトはこれだ!他人の知識や能力を自分のものと錯覚することで進化・進歩してきたのが人間だとすると、ヒット商品(風)が売れるのは、動かしようがないですね。ほお〜。

自分が”知らない”ということを自覚する&他者との協力を積極的に!学び多き本でした!

楽天ブックス)知ってるつもり 無知の科学 [ スティーブン・スローマン ](

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です