「ブランド戦略論」3回目、「マーケティングの民主化」にまつわるアレコレです。
マーケティングの復活
「第4章 ブランド史の構造」は、石器時代(!?)にまで遡り、古今東西のブランドの歴史を網羅した章です。ここだけでも、通常の書籍何冊分でしょうね。。。
そんな読み物として面白い第4章ですが、詳細な過去事例の紹介を経て、いよいよ現在の状況の解説です。1960年代から、新しいビジネス戦略として発展してきたマーケティングですが、1990年代以降、短期的売り上げ目的のプロモーションが重視され、マーケティングが軽視されるようになりました。しかし、2010年代に「デジタル革命」により、マーケティングは直接的にお金を稼ぐ役割になり予算が集中、企業におけるマーケティングが再評価され”復活”したのです。
キーワードは「マーケティングの民主化」
マーケティングの復活は、CMO(Chef Marketing Officer・最高マーケティング責任者)の増加などにも現れていました。私の在籍していた会社にCMOというポジションができたのも、確か2011年頃でしたね〜。
そして、スモール・ビジネスへのインパクトは、このように説明されます。。
スモール・ビジネスやBTOB企業において(〜略〜)デジタル・テクノロジーと戦略手法の発達によって、マーケティングを初めて本格的に実践することができるようになった。
専門の広告代理店でなくても(ネット広告を)さほどの予算をかけずにまた専門的知識がなくてもすぐにできるようになった。この結果、これまで広告を打つことが考えられなかったような小規模な書店などのスモール・ビジネスも広告を利用することが可能になった。またオウンド・メディアである自社ウェブサイトをどのような企業でも保有することが当たり前になり、インバウンド・マーケティングのように、ウェブサイトへの導線を作り出し、顧客を誘導する手法がさまざまに唱えられるようになった。
「誰でも」できるようになる。まさに、「マーケティングの民主化」です。そして、同時に、マーケティングのコアの考え方、STPが本格的に実践できるようになる、という重要な質的変化も起きました。
マーケティングのデジタル化によって、自社が売りたい少数の顧客を市場から選び出し、そこにピンポイントでメッセージを送ることが一定程度可能となった。
予算の大小問わず、小規模からでもやれることはたくさんある。まさに、私たちが目の前にしている、現在の状況です。
マーケティングが普遍化する時代に(〜略〜)ブランド力について考えることが当たり前である時代に変化した。
ここで、
”ブランド”はイノベーションから始まるが、マーケティング・コミュニケーションで新たな”意味”を付与することで成立する
という”ブランド”の定義に立ち戻ります。誰もが、コミュニケーション/情報発信について考えなればいけないのです。そこで戸惑っているビジネスがあれば、ぜひ一緒に考えさせてください!というのが、今の私のモチベーションですね!
ブランド戦略あれこれ① ブランド戦略の3段階
ここから先は、備忘録的なアレコレをいくつか。
ブランド戦略には基礎的なものから総合的なものまで、大きく3段階があります。
- トレードマーク・マネジメント 商標を作り、知的財産として登録し、権利を守るといった基本的な活動
- ブランド単位のマーケティング・マネジメント 個別のブランドごとにマーケティングを考え、実践することで、ブランドの基礎が作られる。
- ブランド価値を高めるブランド・マネジメント 顧客の購入・使用・エンゲージメントに関してポジティブな影響を与えるような顧客のブランド知覚のこと
*ブランド知覚とは
知名度、連想、属性強化、社会的評判、ロイヤルティー、知覚品質など
3番目のようなブランド戦略を実行するには、企業の側で、ブランド価値を資産として評価するブランド資産(ブランド・エクイティ)を意識するのが必要。
ブランド戦略あれこれ② 5つのフェーズ
ブランド戦略というのは、経営戦略の重要な要素なので、とにかく上流から決めていかないと、実行時点でぶれまくります。面倒でも、しっかりフェーズを追って考えるべき。これは、PR観点でブランド戦略という話をするときに、常に気をつけていることです。とはいえ、実践しながら、上流も見直すことができる柔軟な企業の方が、うまくいく、という考え方もあるので、とにかく思考停止にならずに、俯瞰して考え続けたい、です。
フェーズ 1 ブランドに関する基礎的検討
その会社のブランドが何なのか、なぜブランドにするのか決める
フェーズ2 経営戦略レベル
会社がそれを活用する意思決定
フェーズ3 マーケティング戦略レベル
どう売るか決める。
フェーズ4 コミュニケーション戦略レベル
何を言うかが決める。
フェーズ5 ブランド戦略の実行と計画の測定
どうやってやるか、そのあとどうするか決める。
この5つフェーズの実践法が、著者オリジナルのものや、有名なものを含め、様々なフレームワークとしてふんだんに例示されており、この辺りは、まさに教科書であり、実践書です。
抜粋するというようなレベルの情報量ではないので、実務の際に横に置いて、と参照しまくりたい本であります。
スモール・ビジネスでPR初体験!という場合、言いたいことはあるけど、どうやって伝えるかわからない、といったケースが多いはず。これは、フェーズ4のコミュニケーション戦略レベルのあれこれになります。例えば
メッセージ戦略 どのような内容のブランド・メッセージを、どのような形式で、どのようなコンテキストで伝達するか
メディア戦略 どのようなコミュニケーション・メディアをどのように用いて、ブランド価値を高めるか
など。このメディア戦略には、最近のPRを考える上で欠かせない、
ペイド・メディア
オウンド・メディア
アーンド・メディア
シェアド・メディア
の分類があります。発信する側も今何をしているのかを理解するうえで、必須事項のこの辺り、また、別の機会にしっかり整理したいと思います。