「なぜ、私はあの会社を辞めたのか」「どうすれば私やチームメンバーたちは辞めなかったのか」と、退職経験者なら考えたことありませんか?退職時点では明確だったはずの理由も、時間が経つにつれ薄れていくというか、その時の感情が収まってみると、結局、何が真の理由だったのか、辞めずに障害を乗り越える道はなかったのか、と、なんとなく考え続けてしまいます。
そんなモヤモヤの解になるか?な、こんなタイトルの本です。
結論から言うと、タイトルで期待するような「そうすれば辞めなかったのか!」というような爽快な解が得られる内容ではありません。そもそも、誰もが納得する解があるわけもない問いですよね。。。
本著は、「退職者の損失の実態を解説し、適切な引き留め策=リテンション・マネジメントを行うべきだ」と主張しています。
「定着」するための社風や組織風土を形成するのはもちろん、引き留め対象となる社員を見極め、「辞めさせないため」の施策を行うべきであること。辞める側の理由と、企業側の定着施策がずれていることが往々にしてあるので、退職者の本音をしっかり引き出すことが大切、といった内容で、この「リテンション・マネジメント」という概念を、用語とともに紹介し、採用だけでなく、退職も経営
課題とすべきだという問題提起をしています。
ただ、本書で提示されているような、辞める側と引き止める側という2軸で語れるほど、職場というのはシンプルではないのではないか?という疑問が、新たに生じてきました。本著でも、例えば引き留め側だけでも、上司・先輩・人事・経営者と様々な立場があり、本を読み進めるにあたり、読み手としての目線が安定しない感じでモヤモヤっとするのです。
また、本著で示されている企業や従業員への調査やアンケート結果が、調査規模も不明だったり、企業名が伏字になっていることも多かったりと、どこまで自分ゴトとして(または他人事として)捉えていいかも判断しにくく、全体的に中途半端な読了感でした
1点、非常に希望が持てる指摘は、
引き留めの対象社員は、業績が高い人に加え、「職場のコミュニケーションの中心になっている人、その人がいればなんとなく部署の雰囲気がなごみ、みんながやる気になるような人」も含めるべき
という点でした。組織やチームでプロジェクトを進めるうえで、「楽しく気持ちよくやる」ことが”善”と信じる私としても、「コミュニケーションの中心となる人」の価値はもっと認められるべきだと、大いに賛成しています。
最近、骨太の翻訳書を続けて読んだせいもあり、何年もかけて何千人にも調査し、これが原則だ!という真理に踏み込むような、圧倒的な説得力を持つ本の力を感じています。この本の目指すべき主張とタイトルの乖離、そしてタイトルに引っ張られすぎた結果、誰に向けての主張なのかの少しづつのズレ、それが、事前の期待とは異なる読後感を感じさせてしまったのではないでしょうか?
【新品】【本】なぜ、御社は若手が辞めるのか 山本寛/著(楽天ブックス)
<参考>
「若手を辞めさせないために」という観点で、現場の管理職・リーダーとして、これまでで一番納得ができ、翌日からのチームマネジメントにワクワクした気持ちになれたのは、この本です!これも翻訳書ですね〜