シリコンバレーの起業・買収—実名・有名企業名頻出の痛快さ!「サルたちの狂宴(上)」

今年一番の痛快本!起業家やその環境について、かなり理解が深まった(気分になる)本書。まだ上巻ですが、すでに大満足ーー

サルたちの狂宴 上 ーーシリコンバレー修業篇


シリコンバレーのスタートアップ=起業家の実情を、企業・人物とも実名で暴露しまくる回想本。著者のユーモアに包まれて、文句つけながらも、なんだか爽やかな雰囲気。

VCとの駆け引き、創業メンバーとのアレコレなど–起業家のリアルな毎日

創業メンバー、ベンチャーキャピタル、弁護士、会計士などとの様々な駆け引きや、ギリギリ綱渡りの創業期の様子を、著者を中心に日記のように記していくスタイル。ブログと小説の中間のように軽く読めますが、経験の濃さ、情報量の濃さは凄い!

例えば、初めてベンチャーキャピタルに接触する際の回想がこちら。Yコンビネーター(シリコンバレーの有力アクセラレーター)の出資希望者プログラムの締切2日前、2010年3月1日のエピソードです。

その日の午後、さっそく僕は古典的な行動にでた。安定した仕事を捨てて一緒にスタートアップを立ち上げないかと誰かを誘うときは、まねしてほしい。まず、(ポール)グレアムのブログから「スタートアップの始め方」という投稿をプリントアウトして、アルギリスとマシューに渡した。スタートアップに傾倒する道へいざなう、ドラッグのような最初の小さな一歩である。

続く2日間、僕らはオフィスでひそかににプレゼンの準備をし、仕事をさぼって近くのピーツ・コーヒーで作業をした。

VCの評価基準について、こんな一文も。

初期のスタートアップの場合、目が利くすぐれた投資家はそうなのだが、Yコンビネーターも、この時点ではたとえアイデアが実現しそうにないとしてもスタートアップのチームそのものに注目した。アイデアはチームの質を判断する材料にすぎず、内容自体に特に意味はなかったのだ。

著者のサービス「アドグロッグ」も、この一文の通り、ビジネスではなく人材の質で評価される結果となります。

起業とは大企業への面接プロセスだ!

「目から鱗」だったのは、特に以下の2点

・起業=面接プロセスという実態

・IT企業では何千行ものコードそのものが買収の対象

二〇一一年四月一日木曜

フェイスブックのような企業に買収されるというのはどんな感じか、興味があるだろうか?

話はこんなふうに進む。

こうした若いスタートアップの「アクハイヤー(acqui-hire 買収におる人材獲得)」は「acquire」つまり「買収」より、「hire」すなわち「雇用、人材獲得」の意味合いが強い。したがってフェイスブックが関心を示したスタートアップの人間は、個人として求人に応募したときと同じような選考過程をくぐり抜けなければならない。ただ、何人かがまとまってやってくる点で金銭面の話が違ってくる。

買収交渉の過程でかならずついてくるのが、「デューディリジェンス」というくくりで呼ばれるプロセスだ。〜技術面では、相手企業の「スタック」の把握を意味する。スタックとはプロダクトを動かすのに必要な関連ユーザーインターフェイスとバックエンドサーバーの技術を指す。

つまるところ、僕にとってアドグロッグでの日々は、フェイスブックで働くための長くストレスに満ちた採用面接だったのだ。

著者のチーム(CEO+エンジニア2名)はフェイスブックだけでなく、誰もが知る企業もう1社からの買収交渉に応じ、数百万の現金+超有名IT企業への入社、という結果を手に入れます。

私自身、フリーランスの実績は企業に属するとしても大きな強みになる、と考えていますが、「起業家」=企業になんて属したくないはず!と、勝手なフィルターかけて見ていました。IPOか売却か、という単純なルートしか見えていませんでしたが、その後も人生何十年も続いていくんですもんね。。。。こんなことすら実感できていなかった自分に驚きます。「起業」が身近に存在しなかったからなぁ。

起業家の働き方、24時間戦えないとダメ?

もう1点、成功する起業家の条件として、”何もかも捨てて集中できること”が必須だと、本著では言っているのですが、、、

無条件の愛と同じく、成功するのは全身全霊をかけてコミットするタイプだけだ。自転車でツーリングしたり夜のデートにかまけていたりする者は、会社や新しいアイデアの創造に全てをかけたりしない。

若い起業家を支援するNPOに関わっていますが、シード、アーリー、マーケットというフェーズの呼び名すら最近知った、門外漢の私にとって、シード期(1~5名)の起業家の切実さ、サポートの必要性が、改めてわかりました。

ただ、起業家の必須条件として「家に帰らず24時間戦えること」と言われてしまうと、うーん、困ったな、という感じ。それは近道なのだろうけど、そうでない道はないのかな、と。

 

<本著冒頭に颯爽と登場するフェイスブックCOOシェリル・サンドバーグ著「OPTION B」

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