ブランドの理論・戦略・実践・事例をあたう限り「体系」として詳述する企て
である、この大著について何を述べる気だ!と、いう感じの選書ですが(汗)
研究者のための研究書
実務家としての実践の書
大学・大学院のテキスト
と、いわば教科書として構成されているため、非常に内容が濃く、文字も小さい。。。ですが、実は、読み物として(文字の小ささを除けば)、読みやすく面白い一冊です。
今必要とされる”ブランド”とは?
どんなスモールビジネスでも情報発信をしなきゃいけない今、発信するメッセージをぶらさず、伝えきるためには、関係者全員が、かなり上位の概念として「何か」を合意したうえで、実行する必要があります。経営戦略とは違い、発信する上で”共通認識”とすべきもの、それを”ブランド”という言葉で表現される、様々な要素の集合体としてイメージしています。
大企業しか持ち得ない、全方位網羅スキなしの”プレミアムブランド”ではなく、スモールビジネスが、自分たちらしい”ブランド”を育て、強くなるためにやれることは何か?を考えるにあたり、本著によって”ブランド論”全体を俯瞰し、整理することができました。
ブランドはイノベーションから発するが、イノベーションを忘却して成立する
教科書なので!とにかく隅から隅まで情報が詰まっているのですが、この概念は新鮮でした。
第3章 イノベーションとブランドより
現代的ブランドが生じた大きな要因はイノベーションにある。
ブランドは、20世紀の前半までには包装の革新の結果として出現し、20世紀に入ってからは技術的・マーケティング的イノベーションによって成立するようになった。
新しい商品や企業が有名になっていくのは、感覚として当然。しかし、ブランドとして成立するために重要なのは、売れた「後」です。
実際にブランドがブランドとして社会や市場に浸透していくのは、そのイノベーションが「忘れられた」ときである。
これを「起源の忘却」(ベネディクト・アンダーソンの共同体論、国民国家論で提唱された概念)というそうです。
ブランドの起こしたイノベーションそれ自体がいったん忘れられ、広告などのコミュニケーションによって新しいポジショニングで現れることが必要なのだ。
ブランドには広告や口コミ、報道などによって新しい「イメージ」(連想)が付与され、ブランドと新しいイメージとが結合する。
ペンキを上から塗っていくように、成りたい「イメージ」をコミュニケーションによって付与していき、それが一人歩き(期限の忘却)するところまで、いってはじめて”ブランド”となるのです。まさに、受け手の「イメージ」の産物であるブランドを、すごくよく言い表しています。この発見だけでも読む価値あった!
(期限の忘却を経て)ブランドは以前から有名であったがゆえに有名であり価値がある、と消費者から信じられるようになる。
ブランドが社会的に認められ、成立するのは消費者が信じているから、ということですね。そして、成立後も、ブランドはどんどん変化していきます。
さらに次の段階として、ブランドに何らかの意味が付与されたあと、つまりブランドが確立されたステージの後で、ブランド理念に合わせてブランドが再定義されることが起こる。
ブランドは消費者の頭のなかにしか存在しないので、不変ではいられない。絶えず、状況に合わせて変化し続けなければなりません。そういう成り立ちであり、宿命なのです。これを、実務にあたり、常に肝に命じておかないといけない、と気持ちを新たにしました。
続きは、明日!
「書評「ブランド戦略論」田中洋 その①」への2件のフィードバック