”影響力のある組織”に共通する原則とは?
NPO支援のプロフェッショナルである二人の著者が、NPOの支援現場で決定的に不足している”NPOが成功するための”ノウハウ・事例研究・ハウツーを、自分たちで研究し執筆した書籍です。
世界を変える偉大なNPOの条件――圧倒的な影響力を発揮している組織が実践する6つの原則
私個人の状況として、会社員としてのキャリアを一旦卒業し、約20年間のマーケター、パブリシストとしての経験とスキルで、地域やビジネスの課題解決にチャレンジしています。企業を離れると社会的起業家な方々は案外身近にいることに改めて気付かされ、そのような活動にボランティアでなく、プロフェッショナルとして持続的に関わっていくにはどうしたらいいのか、また、NPOなど社会的セクターにとっての”成功”とは何なのか、という疑問を抱きつつ、本著を手に取りました。
著者たち専門家にとっても、”NPOの成功”というものを定義するのは、かなり難しい道のりだったようです。 NPO成功の秘密を明らかにするために選んだ方法は、これまで行われてきたような民間企業の経営手法や評価基準を社会セクター全体に当てはめるものでなく、”偉大な”NPOそのものを研究する徹底的な実例研究、実証的研究でした。本著で”最も偉大なNPO”と定義された12のNPOを選ぶだけでも、何千人ものNPOのCEOを調査し、60回以上のインタビューを敢行、意欲作という言葉がふさわしい熱量高い内容です。
さらに、その12のNPOの研究においても、
何百というインタビューと数年間にわたる徹底的な調査を行うことによって、すべてのNPOのリーダーたちが推進すべき「六つの原則」を見出した
といいます。この”六つの原則”は、NPOなど課題解決のために社会的影響力を重視する人々にとって役立つことは間違いありません。さらに、企業が社会的責任を果たすためにも、NPOとの協力や自社独自の社会起業家的活動が必要となるはずであり、NPO以外の様々な人々が、本著が示す原則から多くが学べると著者たちは主張しています。
社会に影響力を与える12の組織
本著で”最も偉大な”と認定されたNPOは全部で12(研究対象として条件を一定にするため、米国での創設/設立年数など一定の基準を設けた上で選出)。例えば、以下のような組織です。
ティーチ・フォー・アメリカ
1989年創設。米国一流大学の優秀な卒業生たちが、わずかな報酬で2年間、米国でも最も状況の厳しい公立学校で講師として教えるという活動を行い、いまでは4400人の講師と12,000人の同窓生を持つまでに成長。公立学校で教えることを「クール(格好いい)」なイメージに塗り替え、将来のリーダーである優秀な若者のなかに教育改革の先導者を生み出した。
エンバイロンメンタル・ディフェンス
1960年創設。大気汚染防止法や京都議定書などの重要な環境政策に影響を与えてきた。特に、企業との革新的な提携関係により、企業の変化を促進する市場型戦略を導入し、マクドナルドのゴミを減らし、フェデックスの輸送をハイブリッド車に変える支援を行った。
他には、貧困住宅とホームレスの一掃を目指す”ハビタット・フォー・ヒューマ二ティ”や、子供の飢餓救済を促進する”シェア・アワー・ストレングス”といった様々な組織が選出されています。
偉大なNPOに共通するのは、MBA的経営ではなかった!
調査をすすめるうち、マーケティングや戦略計画、運営手腕などMBA的な発想で検証しても”偉大なNPOを偉大たらしめる”要因を見つけられず、著者たちは、自分たちも含め、 NPOにまつわる通説が誤っていたことに気づきます。運営やマーケティングを強化するのではなく、社会に与える影響力を重視し成果が得られることを行ってきている、ということを発見したのです。
NPOの成功の秘密、つまり偉大さとは
NPOが組織の内部の運営をどうするかよりも、組織の外の世界に対していかに働きかけるかという部分に関係が深い。
(レバレッジ〜てこ〜の効果によって)他者に影響を与え、変化を起こさせることによって、より小さな規模でより大きな成果を生み出すのである
後から振り返ると当然の帰結のように見えますが、これまで原則だと思っていたことを改め、新たなモノサシをつくるのは、相当の分析と熟考が必要だったことでしょう。この”発見”に関する著者たちの興奮は、文章を通して読者である私たちにビシビシと伝わってきます。
効率的な運営や大規模な予算、そしてブランディングやマーケティングなどでなく、”社会的影響力の起点となることにエネルギーを注ぐ”という社会起業家たちの有り様に、私も新鮮な感動を覚えました。
著者たちのが見出した”六つの原則”については、次回ご紹介します!
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