書評「世界を変える偉大なNPOの条件」その②

NPOの成功とは規模ではなく影響力である

最も偉大なNPOを選出するためには、成功を評価する基準を決めることが必要でした。そこで、「影響力が大きい」ことの意味について定義することから研究は始まったそうです。その過程で、著者達は通説を覆す様々な事実を発見しました。

世界を変える偉大なNPOの条件――圧倒的な影響力を発揮している組織が実践する6つの原則

民間企業のように、株価や利益を見ることができず、組織ごとに使命や目標も違う状況で、著者達は以下の2点から影響力を相対的に定義しています。

  1. 活動参加人数や政策物などの具体的アウトプットの評価=全米あるいは国際的な規模で、根本的かつ持続的な成果を成し遂げたかどうか
  2. 政府の方針や業界慣行など、より大きな制度や慣習に影響を与えたか=制度全体に影響を与えた組織かどうか

ここには、NPO自体の成長を測るような既存の定義は含まれていません。規模を拡大せずとも、レバレッジ(てこ)効果で成果を最大化することができることに、著者達が初めて気づいたのです。

”最も偉大な” NPOが実践する六つの原則

新たな基準で選出した12の団体を詳細に調査し、彼らが実践していることを分析すると、以下の六つの原則が浮かび上がりました。

  1. 政策アドボカシー(提言)とサービスを提供する
  2. 市場の力を利用する
  3. 熱烈な支持者を育てる
  4. NPOのネットワークを育てる
  5. 環境に適応する技術を身につける
  6. 権限を分担する

1・2・3・4は外部への働きかけ、それを支える5・6の原則といった相互に補強しあう関係になっています。六つの原則を全て活用すれば、「丘の上から雪だるま」を転がすように」勢いを生み出します。

この原則により、政治・企業・個人・他NPOとあらゆる外部を巻き込む力、それこそが必要である、という明確な事実を表しています。

本著は、第1章で研究の全体像を紹介し、2~7章で各原則を一つづつ深く掘り下げていきます。さらに、NPO支援の実務家である著者達らしく、8章では、各NPOの組織や人材、資本といった、六つの原則を使いこなすための組織基盤について、9章では、行動リストや実例など、”六つの原則”を実行にうつすための様々な考え方・やり方を提案してくれています。

NPOだけでなく、あらゆる課題解決に”巻き込み力”は有効です。私の身近にも、ニコニコしながら、どんどん人を巻き込んでいく起業家がいるのですが、あれが組織としてのキャラクターになったら、とにかくすごいパワーになるだろうといつも想像しています。のちほど紹介する著者たちの現在の活動も、NPOだけでなく”変革”そのものに対象が拡大していることを鑑みると、この”六つの原則”はあらゆる”変革”における真実だった、ということなのではないでしょうか。著者の最新作「How Change Happens」をぜひ読んでみたいところです。

ハイキャリア人材が関わる米国のNPOの現場

共著者は二人とも女性。それぞれハーバード大・スタンフォード大のMBAを持ち、国際的組織の責任者や、マッキンゼーのコンサルタントなどの華々しいキャリアです。母親でもある彼女達は、それぞれ執筆当時のポジションを離れ、現在は社会変革のリーダーとして活躍されています。

レスリー・R・クラッチフィールド氏

ジョージタウン大学McDonough School of Business グローバル・ソーシャル・エンタープライズ・イニシアチブのエグゼクティブ・ディレクターであり、社会変革家。最新著作は「How Change Happens

ヘザー・マクラウド・グラント氏

オープン・インパクト 共同創設者

このようなハイキャリア人材が、NPOなど非営利組織へのサポートの職に当然のように関わっているのも、米国NPOの成熟の証に思えます。序文の寄稿者であるアメリカン・オンライン創始者も、自身でNPO財団を運営しているとのことで、翻訳者も書いているように、日本のNPOは米国とは比較にならないほど小規模で狭い地域で活動するものがほとんどです。日本で創設され社会に影響を与えるほどの存在となったNPOはどこか、NPOの運営や支援の現場はどのようになっているのか、など全くの専門外で現状がよくわかっていませんので、これから注視してみようと思います。

ところで、序文が名文なんです!

本著の序文は、アメリカン・オンライン創設者であり、若い起業家を支援するケース財団の代表であるスティーヴ・ケースが寄稿しており、これが非常によい文章でした。NPO(非営利組織)での社会課題解決が、現代においてどれほど必要か、にもかかわらず、「善意」を組織の力で実現することがどれほど難しいかといった本著の前提となる課題に対する深い見識、そして本著の研究がどれほど多くの人に深い影響を与えるかという示唆など、これから読み進める読者に本著への大きな期待を抱かせてくれます。その文章には、自身が財団を運営しているから得られる実感がにじみ、非常に説得力があります。この序文のおかげで、NPO関係者だけでなく全ての人が「自分ごと」として本著を読み進めることができたのではないでしょうか?書評として、非常に参考になる文章でした。



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