新聞記者の取材による、一般人が自治体や国を動かした事例集と、社会起業家が自分の経験から得たノウハウの2部構成。事例が秀逸だと読後の満足感すごい、と実感する本。
社会をちょっと変えてみた――ふつうの人が政治を動かした七つの物語
面白い本でした!読まず嫌いしててスミマセン〜
駒崎弘樹さん(社会起業家)と秋山訓子さん(朝日新聞編集委員)の共著。駒崎さんについては、”病児保育・小規模保育を行政を動かして実現させたすごい人”という情報先行で、
「いろんな記事で見かけるし、この本は読まなくてもいいかな」
と、2016年の出版ながら、今まで読まずにいたのですが、アドボカシー(政策提言/世論に訴え、政治や行政に働きかける草の根ロビー活動)の力を痛感する1冊
を読んで以来、この方面への「食わず嫌い」を改めようと思っており、やっと読了。
なんとなんと、秋山さんが7名の事例をルポする第1章が素晴らしくて!!それ読んだ後の、駒崎さんの第2章「やってみようと思った人への具体的手法の解説」が沁みる沁みる・・・・。
説得力ある事例ルポ… 第1部の著書・秋山訓子さんとは?
第1部に登場するのは、身近な課題を解決するために「やってみちゃった人」7名。わらしべ長者のように、それぞれの活動が大きくなっていく様子が、丁寧な取材で、背景や状況なども含め、丹念に描かれており、ドキュメンタリーのように感情移入せざるを得ない臨場感がありました。ノンフィクション好きには堪らない。
執筆の秋山さんのご専門は政治だそうで、政治がテーマの書籍も複数出版されています。
不思議の国会・政界用語ノート ―曖昧模糊で日本が動く(最新著作)
その他、本著とテーマが近い
取材対象を丹念に描く、という意味では、これも本著に近いかも?な
といった著作があるそうです。本著の出来から推察すると、どれも非常に面白いのでは?と期待が膨らみますね〜。
保活の困難さに声を上げるママ、政治家にならずに政治に関わる道に気づいた若者…など、いろんな立場の7名の事例
事例では、2人目の保活で苦労した1人の母が、SNSで投稿し、役所前でゆるく集会するところから始まる「保育園一揆」の話や、性的マイノリティとして、世間を気にして生きてきた若者が、都議のインターンを体験したことで社会との関わり方が変わり、政治家にならずに政治に関わる「政策を通した自己実現」の様子など、様々な7名が登場します。
特に、保活については、身近なテーマですが、毎秋、恒例のように回ってくる署名用紙の効果に疑問を感じて見たり、なんとなく諦めてる感のある自分は否めません。ですが、本著の事例では、SNSで呼びかけて区役所の前でゆるく集まった50名のママが数週間のうちに、区長に待機児童対策について緊急会見を開かせるまでの影響を及ぼした経緯が書かれています。
例えば、署名をするにしても、
- 保育園入園結果発表日という、一番当事者が集まる日に設定
- 区役所の職員が一番外出するランチ時間帯に実施
- 抱っこ紐やベビーカー連れの普通のママばかり、という見た目
とゆるいながらも、インパクトを最大化するために、よく考えられていたこと。また、市民運動とは普段は縁遠いごく普通のママたちだからこそ、報道陣が反応し取材が殺到、行政が動かさるを得なくなったこと、などがわかります。
「じゃあやってみようか!」と思った人へ、駒崎さん担当の第2部
第1部で、「アドボカシーって案外身近なんだ」と心の垣根が低くなったところで、駒崎さんが、徹底的に具体的なノウハウを列記してくれるのが第2部。
まず動く、発信、仲間作り、役所に行く、議員に会う、
といった一連の行動と、
陳情は有効な手段
報道機関との付き合い方
委員会の一員なるのは大事
国相手に動く時は、また違うぞ!
など、経験者ならではの実感こもった熱量高い情報が詰まっています。
最近、私の住む自治体でも、議員が保護者会活動について発言した結果、保護者会の会議が保育園で出来なくなるという事態になりました。誰かが「議員に伝える」という行動をした結果なんですよね。。。
夏祭りにきているあの議員さんに、ちょっと話しかけて、新しい扉を開いてみよう、と思います。
<関連書籍>読み応えありますが、おすすめです!
「世界を変える偉大なNPOの条件(過去記事にリンク)