書評「評価の経済学」シリコンバレー流のPRとは?

欧米の事例が多く、なかなか手強い1冊。「評価」は、言葉だけでは言い表せない「空気」みたいなものが関係してるので、実感の伴わない事例たちだとイメージしにくく、ちょっと消化不良気味。

評価の経済学

シリコンバレーのPR「メディアが伝えるストーリーは4つだけ」

とはいえ、「PR視点」で絶対見逃せないのが第4章。”評価を決定する3つの要素”の一つとして「物語(ナラティブ)」の項があるのですが、そこでグーグルのコミュニケーション部門の元ディレクター、レイモンド・ナスル氏の持論が紹介されています。これが、非常にわかりやすい!!「メディアにおける”復活の時計”」という概念なのですが、企業広報の経験者で、少しでもネガティブ報道対応したことがある方なら、このサイクルから抜け出す大変さなど、”分かり味”しかないのでは・・・・この項があることで、本書の「評価」は星2つ追加!!

”報道とは何か・何が記事にされるのか”について語るナスル氏、経歴がなんとも華やか。

ナスルは現在、スナップチャットやツイッターなどの企業の顧問を務め、スタンフォード大学経営大学院の講師でもある。アップル、サン・マイクロシステムズ、ノベルで働いた経歴があり、オックスフォード大学の客員研究員でもある(教養豊かであるうえに、起業家でもあり、ソムリエの資格ももっている)。こうした華やかな企業の評価を管理してきた経験に基づき、メディアのサイクルの概念について独自の見解を築いている。

ナスル氏によるとPRで気にするべきは、4つのストーリーだけ。それが「メディアにおける”復活の時計”」です。

「メディアが書きたがることを4つに絞った。それは、トップの企業、落ち目の企業、どん底の企業、復活しつつある企業だ。このナラティブの流れを決めるのは時間なので、時間の比喩を使った。それぞれがアナログ時計の四分円に位置する」

12時がトップ、3時が落ち目、6時がどん底、9時が復活である。時計と同じように、時間は一方向にしか進まず、逆には戻れない。落ち目になった企業は復活のプロセスを経なければトップの位置に戻ることはできない。

12時=トップの企業はメディアに愛されています。アマゾン、グーグル、アップルなど、どれだけ業績が好調か、規模が拡大したか、戦略がうまくいったか、などなど、ポジティブな報道を謳歌します。

でも、少しでも不調の兆しを見つけたら、メディアの伝える内容は変化します。

「この四分円では3時半のストーリーが本当に重要になる」

メディアが反対の物語(カウンターナラティブ)、つまりそれまで事実と思われていたこととは異なる話を嗅ぎつけたとき、勢いは加速する。

そして、どん底の企業として、ネガティブ報道が加速します。

いったん落ち目になれば、どん底、つまりナスルの時計の6時に移るまでは早い。

どん底から抜け出すには、これまでの延長ではなく、何か新しい要素が必要です。例えば、

どん底から抜け出すには決断力のあるリーダーが必要だ。そういうリーダーが現れれば、逆転の舞台がつくられる。コミュニケーションの担当者がもっとも心躍らせる楽しいときだ。

そして、PR担当者としては、忙しくも楽しい、復活のストーリー、これもメディアに大変好まれます。でも注意深くやらねばなりません。

この時点で起こる最大の過ちは、トップに戻ったというストーリーにふさわしいかどうかが注目されているのに、事実よりナラティブを先行させることだ。メディアは注意深く、これまで以上に慎重にあらゆる方面から調べるようになるからだ」

この”復活の時計”、トップブランドのコミュニケーション部門ならともかく、スタートアップのような挑戦者には当てはまらない、、、?とも思いましたが、ナスル氏本人のプレゼン動画を見ると、シリコンバレーのPR原則と強調されています。スピーディーな成長を目指すシリコンバレーのスタートアップでは、とにかくトップに上り詰める、というビジネスモデルを誰もが念頭に置いている、ということなのでしょう。

 

他にも、この動画では、スタートアップのPRへのアドバイスとして、「ニューヨーク・タイムズのようなオピニオンの流れを決定づける頂点のメディアを狙え」と話しています。地元メディアに掲載されるのと、ニューヨーク・タイムズに掲載されるのでは、食物連鎖の頂点と底辺ほどの差がある。頂点を抑えれば、その下のレベルはすべて追随する、というような話です。このアドバイスも、一気にグロースを狙うスタートアップらしい考え方だな、と感心しました。地元メディアも大事にしたいですけどね〜〜〜!

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