書評「働く女性 ほんとの格差」

「正社員の女性の7割が、自分を”負け組”だと思っている」というデータがあるほど、実感が伴わない日本の女性活躍推進。様々な状況の女性40人の本音を取材、対策を提言する1冊。「資生堂インパクト」を書いた日経新聞の編集委員石塚由紀夫氏の2冊目の著書です。

働く女性 ほんとの格差 (日経プレミアシリーズ)

丹念な取材の賜物!女性活躍を取材テーマとしているジャーナリストのルポ

紹介文に「日経編集委員渾身のルポルタージュ」とある通り、

「うちの女性課長、何とかしてください! 」――男性社員から起こる悲痛な声
「みんな残業しているのに、ママ友とカラオケ? ありえないです」――子アリ子ナシの溝
「夫がイクメンなら今頃私は管理職なのに・・・・・・」――一筋縄でいかない家庭とキャリアの両立
「同じ『働く母』とはいえ、実家が近いあの人とは違います」――ワーキングマザーの環境差
「今はパート主婦。活躍する元・同期と大きな差がついてしまった」――高学歴主婦の憂鬱
「女性活躍推進? 全く実感ありません。私とは別世界の話ですね」――非正規社員の本音

など、当事者たちへの丹念な取材により記されています。

実は、私が広報サポートで関わっている、育休ママのための赤ちゃん連れOKのセミナーに、著者の石塚氏が取材の合間に見学に来られたことがあります。その時は前著「資生堂インパクト」出版直後でしたが、大企業からボランティア活動まで、じっくり話を聞く取材のご様子が非常に印象的でした。あのような地道なインタビューがこの本に繋がっていることを思うと、読み手としても気合がはいりました。

非当事者=男性の経営者やリーダー層が想定読者

女性活躍推進法のもと、目標数値を達成するために、時には強引に進められることもある”女性活躍”施策、当事者の心境や、周囲との軋轢、対象ですらないと感じる専業主婦や非正規雇用の女性、、、立場や状況によって課題が異なることは、”ママ”として生活していれば日々の経験で自然に理解共感できます。ですが、本著の想定読者である男性経営者やリーダー=非当事者は、何に困っているか全く見当がつかず、「女性だから〜男性だから〜」と全体論にして身構えてしまう。だからこそ、本著のように、ルポ形式で生身の本音を伝えることは非常に大切です。

私自身は、正社員として育休3回&転職2回、マミートラックも時短も、そこからのフルタイム巻き返しや管理職も経験済みのザ・当事者。ルポについては、正直「うんうんあるある」なのですが、このような「当たり前」を言葉にしないと伝わらない、ということがショックですらありました。

著者は、立場により課題が異なることを認識したうえで、それでも「女性」が活躍できるようにすることが日本にとって重要だ、と断言してくれます。当たり前のことですが、これをデータで示し、論理で示し、ルポのように理性と感情に訴えと、何度でも言い続けていかないと、築き上げられた現状は変えられないことを、改めて実感する1冊でした。

女性とか男性とかでなく、働き方自体の問題として…

本著の事例で、

同じワーキングマザーと比べて「あの人ができてるからあなたも…」と上司に言われたが、実家や夫のサポート、シッター代にいくら払うか?など個々の条件で、ワーキングマザーといっても全く状況は異なるのに!

と憤る経験談があります。「全くその通り!」なのですが、このようにワーキングマザー間の条件論で考えると、果てしなく個別化していかなければならず、キリがありません。そもそも女性男性関係なく、「働くってしんどい…」のが当然な状況を変えるべきです。

「新しい働き方」を実践する組織の方が成果も満足度も高いということを証明して、古い組織を置いていくしかない

ということで、ワーママ生活15年目にしてフリーランスに転身した自分の決断も、意義あるものだと、自画自賛!しております。

2016年に施行された女性活躍推進法は10年の時限立法です。すでに3年が過ぎたわけですね。。。

<女性活躍関連オススメ本>


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後進の女性へのエールがとにかく力強く、やわやわした”女性活躍推進”とは迫力が違う。女性初の大統領になることの意義を誰よりも信じていたからこその悔しさが伝わる、本当に心動かされます!


資生堂インパクト 子育てを聖域にしない経営 [ 石塚由紀夫 ](楽天ブックス)

「働く女性ほんと格差」著者の1作目。

女性はなぜ活躍できないのか [ 大沢真知子 ] (楽天ブックス)

「長時間労働できると、周囲に示すことで一人前とみなされる」という指摘がまさに!という感じ。”長時間労働”に価値を置く組織とは距離を置く、という人生の大きな決断をさせてくれた、大変ありがたい本。オススメ!


仕事と家庭は両立できない? 「女性が輝く社会」のウソとホント [ アン=マリー・スローター ](楽天ブックス)

アメリカの官僚で大学教授で、、、という超エリートの女性でも、私たちと同じように悩んでる、ということが赤裸々にわかり、非常に良かった。正解はないな〜という感じ。これもオススメです!

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人生もキャリアも行動すればこれだけ変わるんだな〜と、元気になれる1冊。

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