「働き方」の本は本当に数多く、いろんな可能性が広がる楽しい分野です。最近は
がよく売れているそうで、私の周囲でも「読んだ?」とよく噂されています。本著は2012年発刊ということで、先駆け的な一冊ですね。
2012年ごろといえば、「副業のススメ」や「正社員ならではのリスク」などなど、なぜ”ナリワイ”なのかに至る前提が、まだ世の中にそれほど共有されなかったはず。そんな世情を反映して、”働き方=生き方である”という大きな理念の提示に、かなりページが割かれているのが良いですね。改めて今読むべき本。
「デカイ案件」でなく、小さな楽しい仕事を多種多様にできるように
著者は体調不良(どうしようもない肌あれ)などをきっかけに会社員を辞め、雇われない生き方から”ナリワイを作る生き方”へとたどり着きます。ナリワイの実験者と自称する通り、様々な挑戦を日々繰り返しているそうです。
私はフリーライターだった時期もある。〜
フリーランスはクライアントの依頼を受けて作業を納品して報酬をもらうパターンが多い。ようするに、仕事をしたらお金が一時的にもらえて、それで終わり、という仕組みが多い。〜
私は自分の文章能力を、クライアントではなく、自分のナリワイのために使うことにした。そこからの仕事は、全く別の次元のものになった。
自分もなってみて分かってきたのですが、フリーランスというのは、便利屋みたいなところがあり、「この人これできるかな?」という感じで少しづつ依頼内容や依頼元が増えたりします。誰かが値付けした仕事の一部を引き受ける場合、自分で値付けして仕事を形作る場合など色々ですが、目指すところは「クライアントから直発注を、なるべく高単価で受注する」という方向に集約されていくものです。自分で決められる範囲は、組織に属している頃に比べ、もちろんかなり広いですが、それでも、著者は”クライアントワーク”の限界を感じ、”ナリワイ”の道を選んだそうです。
企業のビジネスのお手伝いをするクライアントワークをあまりしていないので、「でっかい案件が取れた!」というような大盛り上がりは少ないのだが、じわじわ楽しい。滋味があるというかんじだろうか。
生活の自給度が上がるような、数万円〜数十万円の仕事を組み合わせる、というのが著者の”ナリワイ”。例えば、床を張る・野菜を作る、年に一度の収穫を手伝うと言った、まさに自給自足のイメージの”ナリワイ”もあるし、自分が「参加したい!」と思うセミナーやワークショップをとりあえずやってみる、というのも”ナリワイ”的だそう。大入り満員などは狙わない、1人でも参加があればいい、程度のぼちぼち感が大事、そして「プロ」の仕事になると途端につまらなくなるので、年に1〜2回程度の複数ある”ナリワイ”の一つにとどめておく(結婚式のプロデュースとか、海外旅行のプランニングとか)など、規模拡大とは別の考え方が、そこにはあります。
ナリワイの主眼は「自力でつくれて人間に無理がないサイズで、やれば頭と体が鍛えられて、ついでに仲間が増える仕事」という点である。頑張って売り上げを上げない、ということが大事である。
これからの仕事は、働くことと生活の充実が一致し、心身ともに健康になる仕事でなければならない。
「ナリワイ」は「生業」だから、生活でもあり仕事でもある。労働かと言われれば、やっていて楽しいということも大事な条件なので、単なる労働ではない。「ナリワイ」はあくまで、人生を直接充実させるような仕事を指す。
同時に、人生の支出を減らして、暮らしには困らない安心感を得ておくということも、売上から自由になるためには非常に重要です。「コツを覚えて特訓すれば人間たいていのことはできる」という、その筆頭が「家を建てる」という行為だそうです。
ナリワイ的考え方こそリスクヘッジ
実は、本著を読むのと並行して
技術コンサルタントとして独立開業して年間1000万円稼ぐ方法
という本を読んでいるのですか、こちらは本著とは対照的。企業の技術職だった方々(営業とかマーケティングとかやったことないよね)が、年収1000万を超える高額報酬のコンサルになるにはどうしたらいいか、というのを、実際の技術系コンサルタントで独立開業している方のアンケートデータを通して、紐解く本です。技術コンサル専門のマーケティング指南書として、とても実用的。具体的に、月一回の顧客企業訪問で数十万といった報酬を得ている人は、何をしているのか?人脈・営業・業務分野は何?みたいな。すごくわかりやすくて良い本です。
”でかいクライアントワーク”を目指すことと、”ナリワイ”を複数作ることは対極ですが、どっちもやりたいなぁと私は思っています。効率、売上、成果を追求しないとビジネスは面白くないし、でも、それだけやるなら会社員の頃と変わらない。遊びか仕事かわからないけど、楽しくて数万円が手に入る”ナリワイ”を多種多様に持っておくのは、一社だけからお給料もらう生活とは、全く異なる種類の安心感があります(もちろん、不安定感も)。報酬の大小から解脱できる日がいつか来るのかは、正直わかりませんが、売上の尺度から自由になる時間を大切にしていきたい。なんせ、”人生を楽しいことで満たす!”のが私のモットーですから。
一個でも「ナリワイ」を持つことができれば、それまで収入を完全な会社に依存していたときとは全くちがう景色ぐ見えるはずである。それは、生きる自信につながる。
どれも、飛び込み営業をして獲得したとかではなく、生活の中で出会った人たちの約に立つことを見つけたらやる、というシンプルなきっかけから始まったものだ。
「遊びか仕事かわからない案件がいくつもある幸せ「ナリワイをつくる〜人生を盗まれない働き方」」への2件のフィードバック