書評「強い地元企業をつくる」

自分のまちは自分でデザインする!デザイナー視点の地域ブランド戦略に納得

「自分のまちは自分でデザインする」という理念のもと、中小企業のブランド戦略に携わる著者の本です。インテリアデザイナーだった著者が、地元活性化をデザインする専門家になった経緯、地元企業を元気にする独自手法「アイデンティティデザイン」について、そして、若い後継ぎ達が家業を生まれ変わらせた10例をケーススタディとして紹介されています。

強い地元企業をつくる: 事業承継で生まれ変わった10の実践

著者の会社 SASI DESIGN

http://sasi-d.com/

元気な企業の三つの条件

本著のブランド論は本質的ですがシンプル。中小企業の経営者と日々相対する著者だからこその、取り組みやすさがあります。

「ブランドは記憶」であり、選ばれるブランドになるためには「共感する情報を統一して出し続ける」しかありません。だが、ブランドマネージャーもいない中小企業で、全てのタッチポイント(店舗やら電話対応、仕入先から販売先まで)で同じメッセージを送り続けるのは非常に難しいことです。ただ、商品の新規性や差別化など、目先の言いたいことを強調するだけでは、共感はえられません。

そんななか、著者は、地域の主役になるような元気な中小企業には、以下の3つの共通点があることを整理しました。この3つを突き詰めて「自分のなかの答えを見つけ出す」ことが、自分たちらしい事業、そしてブランドにつながっていくのです。

  1. 使命感:「どうしても成し遂げたいことがある企業は強い」
  2. らしさ:「らしくあることは大切、楽しいから続けられる」
  3. 発信力:「発信し続けないと、誰もわかってくれない」

このような自分の思いに気づいた10の事例は、どれも大変ドラマチックです。老朽化物件を継承した大家、建築不況にあえぐ塗装業の後継、家業が大嫌いだった食品会社社長など、事例一つ一つに、家族や個人の物語があり、ビジネスとしての変革がありました。

自分のアイデンティティーは自分しかわからない

外部コンサルタントや専門家派遣制度(商工会議所などから著者のような専門家が派遣され、無料で2時間程度の相談できる制度)を活用し、客観的な視点を取り入れるのもよいですが、著者が強調するのは「答えは必ず自分や自社のなかにある」という点です。これは、本当に大事な指摘です。

PRの現場で私が大切にしていることも、自分たちが本当に伝えたいことはなにか、を言語化し、関係者の共通認識にすることです。例えば取材を受ける際、メディア側にもテーマがあり、伝えたいストーリーがあります。それが、自分たちの思いとずれていないか、もしずれていたら譲れない点はどこか、など微妙なニュアンスまで気を配り、発言内容や撮影対象を組み立てることが重要です。なにもかも「お任せします!」では、全く思ってもいない「想い」を代弁させられる、残念なメディア露出になってしまうことさえありますので。。。

元気な企業が交わり、継続し、強い思いで共鳴しあうことが、地域ブランドにつながる

本著は先日、別記事で取り上げた書籍「プレイス・ブランディング」と大いにつながる内容であり、2冊を続けて読んでのは、非常によい体験でした。地元の事業者たちが「プレイス」を作る一つ一つの点であり、必要不可欠な存在であること、そして、このような事業者が地域の特徴を形作り、点だったものが線や面になって、ブランドが形成されていくはずです。著者の近藤氏は、自身の地元である兵庫県丹波市を起点に活動されており、この地域に「影響力を持つ個人」になりえる存在かもしれません。継続性、多様な交わり、大きな影響力と強い思いを持つ個人の登場、といった「プレイス・ブランディング・サイクル」が今後も進行していくのか、興味深いです。丹波の町の変化を肌で感じるべく、今後訪れてみたいと思いました!

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