業績管理シートの記入(特に自分の)が本当に嫌いで嫌いで、あれを書かない人生にたどり着けて、最高に嬉しい今年。そんな「業績管理システム」を含む様々なコンサルティングファームの「発明品」をバッサバッサと切り捨てる、痛快な本です。
コンサルは「芝居」で商売している
経営コンサルタント、そして大企業のマネージャーとしての約30年のキャリアの中で、私はじわじわと確実に、私たちが適用していた経営理論の多くがまちがっていることに気づいて行った。
本著では、著者がコンサルタントとして企業に売り込んだ多くの経営手法が流行っては廃れて行った過程を実例としてあげつつ、ビジネスの常識の誤りを暴露していきます。目次に並ぶのは
・ 「戦略計画」は何の役にも立たない
・「最適化プロセス」は机上の空論
・「数値目標」が組織を振り回す
・「業績管理システム」で士気はガタ落ち
・「リーダーシップ開発」で食べている人たち
などの内容。2013年の原著の出版から5年経ってもなお、いまだによく聞く用語が並んでいますね。
コンサルタント業界への評価は、ユーモア溢れる文章ながら、かなり辛辣です。著者曰く、経営コンサルタントの多くは
・「流行りのダイエット」の様に、次々と経営手法を開発しては、それを特効薬として売り込み続けているだけ
・業界のオピニオンリーダーとして、自分たちの開発したモデルが多くの企業に開発されて、富と名声をもたらすことを望んでいる
・実社会での経験のない新卒コンサルタントがモデルや理論を鵜呑みにしたまま、企業に入り込んでいる
といった調子で、最終章に至るまで、コンサルタント業界のやり方、プログラムやモデルの誤りについて、著名なモデル開発者の実名をあげつつ、間違いを指摘して行きます。
自虐だけでなく、前向きな提言も
ビジネスの常識にことごとく異を唱える本著ですが、批判ばかりではなく、著者からの提言も、全体にわたり織り込まれています。それは特効薬などではなく、至って常識的な
モデルや理論などは捨て置いて、みんなで腹を割って話し合うことに尽きる
つまり、人と人とのコミュニケーションの改善を第一に考える、ということです。また、コンサルタントを雇う時に一番やってはいけない事として
自分たちの代わりに考えさせること
ということも何度も書かれています。まちがっているのがわかりきっている経営手法を試すよりも、対話や人間関係の改善によって真実を明らかにし、自分たちで解決策を考えよう、というこの提言を含め、著者は本著について
まさに当たり前のことを書いた本だ
と表現しています。
原著は日本では2014年の出版ですが、全員を同じ方向に向かうことを当然とする、従来型のピラミッド組織の限界を指摘している様にも感じました。
巻末には、コンサルタントの「使い方」として、危険なコンサルタントの見抜き方など、ジョークとも本気とも取れるリストがついていたりと、最後までユーモアたっぷりです。
社外からPR業務を担う私としては、笑えない部分も多々ありましたが、クライアントごとに状況は異なり、同じ手法が当てはまることなどない、ということには大きく同意です。常に「真の課題」に到達する努力をすることを忘れない様にしたいですね。
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「コンサルタントの誠実なる自虐「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」」への1件のフィードバック